興津1000 #Day3
「今日も今日を走る」
3日目朝、出発まで
次に目が覚めたら朝の6時だった!多分2時くらいに寝たと思うので4時間ほど寝ることができたらしい。 とりあえずベッドから起きあがったが昨日よりも脚のだるさを感じた。しかし起きたら最初にしないといけないことがある。洗濯である。
起床
— UG (@gr8distance) April 30, 2025
凄まじい疲労感
これまで7日で1000kmとか走ってきたこともあるけど余裕で上回る
洗濯物をまとめたので出発前に電子機器の充電状況を確認するとなんとライトを充電していないことが判明する。 今回のブルベで利用しているライトは2灯とも12時間以上照らせるモデルではあるものの、昨晩も5時間程度光らせた後である。 そして最終日、これからはゴールまでは夜通し走る事になる...。となると充電はギリギリ耐えるか耐えられないか。。。
流石にまずいのでライトの充電を開始してランドリーに移動。30分前に開店したランドリーに行ってウェアを入れたらその足で真逆の方向にあるコンビニで朝ごはんを購入する。
このブルベで徐々にわかってきたことはしっかり食べれば疲れててもしっかり踏めること。そしてカップ麺は消化に悪いけどカップ麺じゃなければ割と食べやすいことである。
(逆にこれまでのライドではどれだけハンガーノック状態で走ってきたのかもちょっと見えてくる。自分がハンガーノック状態でも数時間走れてしまう上に更に走る裏技を複数持っていることが悪い)
この学びを活かして朝ごはんは天ぷらそばを購入。ついでに100km先のPCまでの補給で利用する分のジェルも3つほど購入する。
ホテルに戻ったら6:30だったけど既に出発準備しているライダーが一人、善子ちゃんがいた。あなた昨日も6時に出発していたのでは...タフすぎるだろ...。
そして更にフロントに戻ると朝ごはんブースが!!。そう、このホテル素晴らしいことにかなり早朝からご飯ブース開けてくれる上に1000円で食べられたっぽい。
コンビニご飯も悪くはないがホテルのご飯が食べたいなぁ...という気持ちになった。朝ごはんチケットは買ってないので部屋に戻っておそばを食べる。
蕎麦は流石にかなり食べるのに苦労した。口には入るけど顎が噛む事を拒否してる感じ。一口入れて数分噛んで水で流すようなことをやってどうにか完食。
完食している間に1灯充電できたけどもう一本の充電がこれからで更にiPhoneの充電もこれからという状態...。
時刻はそろそろ7時。まだ時間はあるが人間の準備だけがどんどんできている状態。
今回のライドでは充電器は1セットしか持ってきていないためライトを充電すると他に何も充電できなくなる。
ダメ元でフロントに連絡したら充電器を貸してもらえた(神)。なんていいホテルなんだ...と部屋に戻って充電しつつ、洗濯が終わったウェアを取りにランドリーへ。
部屋に戻って充電が進行中なことを確認したら本当にやることがなくなってしまった。 やることがないのでベッドで転がっていると大浴場が早朝から開いていることを思い出した。(素晴らしいホテルだN回目)
ライト充電でやることないから大浴場で朝風呂
— UG (@gr8distance) April 30, 2025
最初のホテルでも湯船に浸かったらだいぶ疲れが取れたので再現性あるかもしれん?と準備して大浴場へ。当然のごとく貸切なのでありがたく使わせていただく。
そこまで熱いお湯でもなかったので30分ほどゆっくり過ごして部屋に戻ってきたら8:00過ぎ。
充電は完了してはいないが流石に持つだろうということでウェアを着替えて荷物をまとめ始める。
フロントに充電器を返したりバイクにパッキングを取り付けたりして準備ができたのでいよいよ3日目が始まる。時刻はまもなく8:30。すでにほとんどのライダーが出発したあとではあったが僕の予定より30分早めの出発である。
いよいよ今日を走る時間がやってきた。
行ってきます pic.twitter.com/59L6bcLDEA
— UG (@gr8distance) April 30, 2025
PC7~PC8
例によって漕ぎ出しは石像になってしまった自分の脚を取り戻すことから始める。PC7はホテルから5km程度の距離だったのでとりあえず足ならし区間のつもりで走る。本当に目と鼻の先なので一瞬で到着した。
到着したら屈強なランドヌールが2人、朝ごはんを食べていたので挨拶だけして店内へ。 すでにホテルの部屋でご飯を食べていたのでジェルだけ購入してすぐに走り出す。
ここから先は300mくらいまでは登る必要がある。 流石に漕ぎ出しこそ脚が重かったものの、比較的すぐに脚が回るようになってきたので登る。
実際この時はかなり踏める気配を感じてはいた。予想では130Wくらいでヘロヘロ踏む事になるかなと思っていたものの、180Wくらいまでは維持できる感じがしていた。 もちろんここで無理して途中リタイアはしたくないので危ない橋は渡らないようにパワーはセーブした。
パワーは出せると分かっているのでパワーを抑えて走る。パワーが出ないからギリギリで粘るのとは全然違うこの状況にかなり安心する。
周りを見ればやっぱり雪が残っているし、その影響で道は濡れている部分もある。 こんな低い山でもそうなのか...。とても同じ国とは思えん...とか考えてみたり、昨日の戸隠は本当にDNF寸前まで行ってたなぁ...など考えてみたり。
余裕があると考え事が捗る。がそんな思索も脚の小指の痛みで現実に引き戻される。 昨日と一昨日は何事もなかったのに突然どうしたのだろう?シューズの締め付けが強かったか?なんだ?そういえば今朝大浴場でみっちり足を温めたし、もしかしたら脚のサイズが前日より少しデカいのかもしれない。
自分のシューズは靴紐式なので紐を緩めるもそれでも痛い。最終的に足先の紐は緩く、足首に近いところはそれなりに強めに結ぶと痛みが落ち着いたが、良い感じのセッティングに至るまでに何度か停車してしまった。
やんごとない。何せ今日の走行距離は370km(DNFしなければ)になる。痛みを抱えて走ることは難しい。
靴紐がいい感じになってからは良いペースで走れた。PC7~PC8までの区間もなかなかのアップダウンになる。(1300mくらい登る事になるが) しかし一つ一つの登りは小さく、小高い丘を連続して消化していく感じ。一個一個が短いのでパワークライムして下りで回復するという僕の好きな走り方を選びやすい。
一つ一つの登りを超えていくと、1台、また1台と先行していたランドヌールたちを捉えていく。みんなPC以外のコンビニや道の駅で休憩している。 僕も立ち止まりたい気持ちは湧かないではないが、それでも今日の核心部は1400m近い山の上で距離的にはどう考えても真夜中に到着する事になる。 昨晩山越えして寒さで死にかけたのでちょっとでも早いうちに核心部に取り掛かりたい。となるとここで油を売っているわけにもいかん。
漕ぎ出しの重だるかった脚もいい感じに暖気されて回るようになってるし補給も万全。止まるな止まるな。
いつの間にか市街地を抜けて気がつけば山間を縫うように走る。 補給に関しては1時間に一回200kcalのジェルを摂取することでペース自体は変わらないんだけど段々と気温が上がってきた。
半分くらいの距離を消化したところでいつも以上に喉が渇き始める。出発時点で1Lあった水がもう空っぽに近い。 PC間の距離がほぼ100km(99kmとか)だし無補給で走れるだけの水と食料だったはずなのに50km消化で水が底をつきそう。
できるだけもたせて走るけどいい感じの自販機があったらどっかで停車しようと決めてから20km。ついにボトルが空になってから5kmほど走って限界が来たので日陰のある自販機前に立ち止まって水を購入。
立ち止まってる間にサイコンで気温を確認したら33℃(Stravaで確認すると最高気温は35℃だった)になっているではないか! 昨日3℃でライドを終えて今日は33℃の中を走っている!?気温差30℃!?
夏じゃん。そんな夏日の中を3℃の時のウェアで走ってるんだから水の減りも早いわけだ...(秋冬用の長袖ジャージ+ 漫画家なりきりセット(長袖) + 長袖インナー + レッグウォーマー) 流石にレッグウォーマーだけでも脱ぐか?など考えたけどどうせあと数時間で20℃は下がるんだし脱ぐのも履くのも面倒なのでそのままで。
ただビブショーツの肩紐が首と肩に負荷をかけてる感じがあったので肩紐だけ腕を通さないようにして適当にジャージの下に入れておく。 ただの水購入の小休止だったがこの変更でだいぶ首周りが楽になった。特に肩紐は1,2日は肩紐はそのままでも何も問題なかったんだけど、やはり3日目となると色々と痛み始めるんだなと。
結果的に良い小休止になったので遅れではないが停車していた分を取り戻すのに再出発する。やはり停車すると漕ぎ出しは辛いがすぐに慣れると言い聞かせて進むこと1時間。ようやくPC8のコンビニが見えてきた。
Roubaix
このバイク、購入する前は3ヶ月くらい悩んだ。TarmacSL7があるのに買う理由あるのか?と。 ただ年末には1時間走るだけで首が痛むようになっておりTarmacで1000km走れる未来は見えなかった。
とはいえRoubaixに乗り換えたら解決するかどうかもよくわからないので2度ほど試乗させてもらったりしてRoubaixの感触を確かめていた。 FutureShockなるサスが本当に人間に優しいかを確認したかったからである。
Roubaixのサスは硬さ調整ができる。下位モデルは直接のバネ交換になるが上位モデルはサス自体に調整機構が搭載されていて8段階の硬さをライド中に変更できる。 試乗で借りたRoubaixは下位モデルでサスは中間の硬さのバネ入りだったので、ほとんど優しさは感じなかったw (それだとRoubaixの魅力を伝えられないから試乗車として問題なのでは?というのは置いといて)
試乗ではむしろシートポストのしなり(AfterShockというらしい)の方が好感触だった。 悪路走破性についても確認したかったので河川沿いのグラベルに突撃してみたが、これに関しては別にTarmacで走るのと変わりはないように思えた(サスが硬いから仕方ない)
正直なところ注文自体が賭けみたいなものだった。僕自身パチスロは全くやらないが、しかしギャンブラー家系の運命か注文した。 ITJ後、トレラン熱が高まって自転車から完全に離れてしまわないようにITJの直前にRoubaixを注文した。
今回の1000km、特にこの区間は取り立てて危険もなかったのでRoubaixの購入が正解だったのか?ちょっと考えていた。 自分はRoubaixに満足している。何に満足しているか?それは長距離走行時に求める多くのことがこの一台にパッケージングされている事にある。
つまりこういう事である。
- 脚があるときはTarmacのように走る(Tarmacの80%くらいのイメージ)
- よく加速する
- でもTarmacよりは遅い
- かなり軽い(この分野のロードバイクと比べると)
- ダウンヒルが速い
- でもTarmacよりは遅い
- ダウンチューブとトップチューブにマウントがあってTarmacよりも積載が簡単
- 素手で走っても600km以上痛みも痺れもなく走れるサス
- 購入する際に自分の体重に合わせて一番ソフトなサスを一番柔目にセッティングしてもらったのが良かった
- お尻に優しいアフターショック
- 振動による突き上げがかなり減る
- 路面が悪くてもあまり失速しない
- これのおかげで戸隠の下で回復できたと思う
- 疲れていても130W出せれば25km/hくらいまでは加速する空力性能
- 加速したら100Wまで下げても巡航できた
- 多分ホイールベースがちょっと長くて直線の走行はTarmacより安定している
疲れているときはちょっとのストレスも強く感じてしまうので、精神面でもサスがあることの安定感は非常に良い。 初日の向かい風も、疲労の極致にある今も安定して走れているのはバイク性能によるところが大きいと思う。
PC8 -> PC9 -> PC10
PC8~PC9の間は20km程度しかない。なのでPC8では補給食だけ買ってすぐに出ようと思っていたのだが、身体が勝手にカツカレーを買っていた。 買ってきたあとで「あ!?」ってなったけど買ってしまった上に温めてもらっているのでそのまま食べる。
昼飯行きます pic.twitter.com/1mp0Wtl1iA
— UG (@gr8distance) May 1, 2025
気温33℃。コンビニの周辺には50cmほどの日陰しかない。僅かな日陰に腰を下ろして食べる。当然日陰とはいえお外で食べるカツカレーである。あつい。 「冗談じゃねぇよ。暑い時には冷たいもんだよ」という声が聞こえてくるがこのブルベを完走したい(つまりは勝つ)のでカツをかきこむ。 米が沁みます。美味いです!
10分ほどでカレーを食べ終えてそろそろ出発かというところで、昨晩終盤に一緒に走ったおじさんがPC8に到着。 一瞬曇っていたので挨拶してから日陰がどこからどこまでかを共有だけして僕は次のPCへ移動開始。
PC8~PC9の区間はわずか20km程度の距離のためすぐに到着するかと思っていたが市街地区間を走行するため信号と渋滞で一気に速度が落ちた。 思えばここまでほとんど山岳区間の走行だけでであったので信号全部数えたとしても数えられるくらいの数しかなかったもんな。
1時間の後にPC9へ到着。水とジェルだけ購入して80km先のPC10を目指して走り出す。 コース的にもこのあとは千曲川(チクマガワ)の河川沿いを進む事になっており、渋滞区間もすぐ抜けて走りやすくなるだろうと思っていた。(実際は渋滞を抜けるだけでも一苦労だったが)
距離も短く登りはあるが勾配も緩い。そして脚もある。渋滞さえ抜けてしまえば3時間以内にPC10に抜けられる算段だった。楽勝である。 渋滞を抜けて河川沿いに入ったところで突然の向かい風の登場。初日の地獄の再来を予感させる風だった。
予感は不幸にも現実になった。この区間、前輪を持っていかれそうなほどの向かい風が2時間吹き続けた。 天気予報では無風に近いくらいの風の情報しか無くこの風は完全に予想外。一過性のものかもしれないと30分程度粘ってみたが埒が明かず。
この区間で無理に速度を出そうとするということは終盤の登りで使う脚とカロリーを失うことを意味する。 全く当てにならない天気予報はサブスク解除だ。差し当たりこのブルベを完走してからな!と恨み言を言いながら走る。叫んでも風にかき消されて何も聞こない。
観光などする余裕もない。1秒後に前輪がどっちに振られているかわからないのだから。とにかく前輪荷重重点で進むしかない。 何が面白いのか微塵もわからないまま風に頭をシェイクされること2時間。ようやく風の切れ目に到着したらしい。
40km近く耐えに耐え忍んでちょいマシになった
— UG (@gr8distance) May 1, 2025
この3時間で60kmしか進めてない。全然速度の乗らない区間だったが落車しないでここまで来れたので良しとしよう。 激闘しているうちに日が落ち始めていたようだ。徐々に暗くなってきたのでサングラスをヘルメットに掛けて登りを攻略していると数時間ぶりにランドヌールを発見。
あの見覚えのあるジャージ、もしかして善子ちゃん!?善子ちゃんじゃないか! 奇跡的に10時間ぶりに善子ちゃんと再会。声だけかけてすぐにパスする。いつの間にか2時間のギャップを埋めていたらしい。すごいなオイ。
2時間のギャップを埋めたという謎の興奮と風が弱まったのをいいことにパワーを上げて登る。(PC10は600mくらいの山の上にあるので) 薄暮の青くぼやけた景色とマッチするローソンが現れた。PC10に到着である。
PC10 -> 野辺山 -> PC11
長野川最後のpc着
— UG (@gr8distance) May 1, 2025
この後50km/1400mまで登って130km下れば終わり
ファッキン暴風区間で大減速したけど粘りの走りで10分ほどしか遅れなかった
偉い僕 pic.twitter.com/jl2Pi48v5T
PC10に到着した時点では日は落ちてしまっていたので気温も落ちてきていた。この時点ですでに気温は15℃まで低下している。 数時間前まで30℃あったというのにPCで補給するだけでも寒くて防寒着が必要そう。停車してすぐにサドルバッグからGoreのレインシェルを取り出して着用する。
コンビニ飯の美味さに気づけた1000kmになったのだがかなりの時間向かい風と暑さに振り回されてすぐにオムライスを食べるのがキツい。 一口二口と食べ始めたところで先ほどパスした善子ちゃんが来店。外で食事しているともう一人、今度はダイヤちゃんが来た!
奇しくも初日の暴風区間を戦った3人が会する。面白い偶然である。 ダイヤちゃんは常に後ろから現れるので今日は何時に出発したのかを聞いたら僕より1時間早く出ていたそうだ。 てっきり後から来たのかと思って脅威を感じていたのだが逆に全員パスしてたらしい。もしかしたら道の駅かコンビニで追い抜いたのかもしれない。
三人でこの後のコースについて話す。この後1400m近くまで登ること。昨日の寒さだから今日も寒いかもしれないこと。そしてこの後雨の予報であること。 またこの時にダイヤちゃんから前のPCであった、昨日一緒に最後の70kmを走ったおじさんは750km地点でDNFしたことを聞く。
あのPCで再会した時、おじさんはそんなことは一言も言ってなかったのにあのPCの後20kmでDNFしていたのか。 一瞬カイジの石田のおっちゃんが脳裏を過ぎる。「落ちた…落ちちまった…無言で落ちた…!」
その報告を聞くとちょっとナーバスになってしまった。昨日まで一緒に戦っていた戦友が一人、一人と消えていく感じ。 いつ自分にお鉢が回ってくるのかを考えるとちょっと落ち込みもしますがしょうがない。かくなる上は落ちる前に完走するしかない(脳筋)
食事も終わったのでこの先の攻略について考えておく。
今が標高600mでピークが1400m。今が820km地点で登坂完了は860km。つまり40kmで800mUPという感じだろうか。 ここまで走ってきた感じ、ゆるゆる登り続けるという感じっぽい。もしそうであるなら全然良い感じじゃん。登坂の途中で垂れさえしなければ良い。
ここは気合の入れ直しということで一本コーラを買い足しておこう。これで僕のボトルはスポドリとコーラという甘々ボトルになってしまう。喉が渇くがハンガーノックになることは無い。
準備ができたので挨拶だけして出発する。PC10からしばらくは下りだったもののすぐに登りに変わる。 少しだけ走ってみた感じだが、動いていると思ったよりも寒くない。むしろレインシェルの下で汗を掻いた後に汗冷えする方が寒いかも?そこで少し考えて防寒着を脱ぐことにした。
標高は着々と上がっていくが走り続けていられる限りは寒さは感じない。決定的に運動強度を維持できなくなるまでは防寒はしないことにしてレインシェルと手袋をサドルバッグへ戻す。
コーラの影響か?それとも直前のコンビニで食べたオムライスの影響かここまで830km走ってどういうわけか今は脚の調子が良い。 斜度が緩いことも手伝ってガンガン登れてしまう。1時間ほどで20kmほど進んだ。登りということはあまり意識しなくて良さそうだ。あと20km、標高も1000mに迫りもう少しでこの山も終わる。
まだまだ脚に力を感じているしこれは上まで防寒無しで良いかもと思っていた。 運動強度は維持できていたが1200mのところで気温の落ち方が尋常じゃないことになっていた。運動強度を今より上げないと徐々に冷えてしまう。ここでジャケットとネックウォーマーを着用。
これらを着用すると一気に暖かくなるが強度を維持すると今度は汗で冷え始める。下りも近いので汗を抑えるため緩めの強度で登る。 少しペースは落ちたが山頂50m手前のところで下に備えて追加の防寒を実施。具体的には昨日コンビニでゲットしたフリーの新聞紙をお腹に巻くなどだ。
これや pic.twitter.com/pGvhok8dM0
— UG (@gr8distance) May 1, 2025
ジャケットの下をドライに保てていたのも相まって下りで冷えることはなく。標高はすごい勢いで下がっていく。 良いペースで1000mほど標高を下げたら何故か突然登り返しが...?
なんでやねんと思いつつ、そういえばまだトータルだと最後の1500mほど登ることになるらしい。1400mから0mまで降るのにその間に1500m登というのは降るより登る方が多いということになりませんか!?
コースプロフィールを見た時から900kmまできたら脚を止めてもゴールできるじゃんと思っていたので目論見は崩れ去ってしまう。 トータルで8500mは攻略してきたし、あと1500mくらいなんて事ないよねぇ!コーラを飲んで踏み直し韮崎のコンビニを目指す。 一瞬雨が降ったり登りの連続で萎え掛けたところでPC11のコンビニを発見したので休憩する。
PC11 -> ゴール
PC11で買い物をすると店員さんから競技ですか?と尋ねられる。「はい、1000kmを3日で走る変わった競技なんです。」と返事すると、今日初めての選手ですよ!と教えてもらう。
ここに来て自分がこのブルベの先頭を走っている可能性が出てきたことに混乱する。もっと早く走ってる選手がいたのでは?と聞いてみたが「そんな人はいない」と言われる。
*本当はブルベは競技ではないという話もあるが、説明するのもややこしいので競技と言っておいた。そんなこと、誰も気にしないしな
わからない。そもそもここまでトータルで6時間ほどしか眠れていない。難しいこと何もわからない。
コーラの影響もあって疲れた体が食べ物を徐々に受け付けなくなっている気はしたが最後の90kmを処理するにはカロリーが必要。ここはバターチキンカレーをなんとかお腹に押し込む。 本当はカツカレーを食べて「勝つさ」したかったのだがバターチキンしかなかった。
立って食べるには脚が限界だったので地面に座り込んで食していると一人ランドヌールがやってくる。 聞けばこの辺に住まれているそうで土地勘バチバチの人だった。その人からこの先で鹿が出るということを教えてもらう。
もう少し休憩していると前のPCであったダイヤちゃんがくる。やっぱり登り早い(解釈一致) 自分はすでに食事を済ませていて、あとは仮眠するかそのまま走るかの選択だけだった。
カフェイン飲んだら眠れなくなるしなぁ...走り切るか寝るか迷うなぁ...などと考えていたのだが気がつくと目の前にコーヒーカップをセットしたコーヒーメーカーがあり黒いコーヒーが充填されていた。 怖い。カフェインは良くないよねぇと思いながら無意識にコーヒーを購入していた。怖い。
このまま走り出して大丈夫なんか?すでにまともじゃない自分がいる。それはわかるのだがコーヒー飲んだらもう眠れないので行くしかない。行くしかないんや! 時間はすでに1:00。この先雨が降る可能性が高いので進むしか選択肢がない。
カフェインとカレーのカロリーで身延までは凄まじく踏めた。どのくらい踏めたかというと下り基調?なのにアベレージで120W出てるくらい踏めた。 やっぱカフェインすげぇなぁ...今朝の100kmよりずっと踏めてるぞ...。と思ったのも束の間、カフェインの気持ち悪さに胃腸を破壊されてしまう。
吐き気がする。気持ち悪い。吐き気と闘いながら走っていると鹿さんが道路を横断していることに気づく。 先の情報はすべてが正しかったしコーヒーを飲んだ判断も間違ってはないのだけれども結果として眠気の代償に胃腸のトラブルを抱えながら鹿の脇を抜けていくデンジャラスな区間になってしまった。
鹿がいつ突撃してくるかわからないので鹿がいそうな気配がしたら「通るぞーーーー!!!!」「出てくんなよーーー」と叫びながら走る。山と川しかないんだから許してくれ。
そのまま進んでいくとゆるキャン▲で見た光景の道に出てくる。図らずも聖地巡礼ができたりしてよかったのだがもう写真を撮れるだけの精神的な余裕もない。 そんな状況で20km/h~25km/hくらいで走っていくといつの間にやら富士市に入ったらしい。つまりこれは静岡に戻ってきたということだ。
真っ暗闇の中を抜けてきたので時間の感覚も無い。だた距離だけが認識できる時間の代替として機能している。 ここまで数十キロに渡って走ってきた富士川から離れる時がきた。沼津から静岡に抜ける時に何度も通った道に出る。
JR東海の駅が出てくる。ゴール地点まであと3駅分。ここでようやくゴールまで10kmなのだという実感が湧いてくる。 頭の中にはいつものフレーズが湧いてくる「いつの間にかきたね。こんな遠いところまで。」
徐々に空が青白くなってきておりライトを消しても走れるそうだ。「あぁ空はいつもの青い空」 最後はいつもキセキヒカルが待っている。「何もなかったのに、何かできる気がしてたよ。」「大胆すぎたかな。でも頑張れた」
歌詞が旅の終わりのセンチメンタリズムに刺さる歌詞が盛りだくさんだ。そう思ったら突然聴きたくなった。 詩をなぞるだけじゃなく、Aqoursの歌で聴きたくなったので停車してiPhoneで再生。音量はいい感じにしてレインシェルのポケットに突っ込んで再生開始。
時間は4:00。静寂の道にラチェットオンとキセキヒカル。「明けない夜はないと走ってきたね。」 ゴール手前4km、国道1号線の横断で信号無視のトラックに轢かれかけるなどのリアルインシデントはありつつも無事にパス。
明日の天気を「祈り」 朝起きたら目の前の大地に道があることを「祈る」 眠る場所と食料があることを「祈り」 焚き火に火がつくことを「祈る」 この当たり前のことを繰り返しながら友と馬の無事を「祈る」 そして一つ一つの河を渡る。 今、最後の河を渡り終わった。 ジョジョの奇妙な冒険 第7部 Steal Ball Runより抜粋
ゴール -> 家へ
最後のPCではお茶漬けを購入。お湯を注いで店外に出るも全然食べられそうな感じがしない。 食べられないのでとりあえず家族に無事完走したことだけ連絡。そこから15分ほど経過してダイヤちゃんが無事にゴール! お茶漬けを食べた後にゴールしたことを讃えあう。
今後のブルベの参加とかどうするのか?とかレース何出るの?とか。 一通り話した後に始発の時間が近づいてきたので駅まで走るため自転車に跨る。
漕ぎ出したけど体幹に力が入らないや。脚にも力が入らない。70Wくらいしか出ないのでゆっくり駅まで向かう。 道すがらまたランドヌールとすれ違ったので挨拶する。すれ違ったランドヌールはニコニコだった。
少し時間はかかったが駅まで到着したので自転車を輪行袋につめて電車に乗り込む。 3日ぶりに自転車以外の乗り物に乗る。そう、ゴールしたから自転車以外の乗り物に乗って良いんだ! ようやく自分の旅が終わったんだという実感が湧いてきた。だって脚を動かしてないのに移動してるのだから。
完走した感想
コンビニでカツカレー食べたり、ホテルの大浴場でゆっくりしたり、道すがら知らない人と話したり。
四月の雪も、薄暮の日本海も、走ったこともなかった土地の匂いも、ギリギリで跳ねられなかった国道も、どれも奇跡的なバランスで最後まで走ることができた。
これにて興津1000完走。完走した時はもう勘弁と思っていたけど来年も出たいとか思い初めている。
とても良い旅だったのだ。